甘い時間を過ごしたヒイロは、全身に疲労が色濃く残る体を気だるげにデュオに擦り寄せる。半分眠りに落ちかけていたデュオはうっすらと瞳を開けると、ヒイロの首下に腕を入れ腕枕をする。そして、ヒイロのおでこに優しくキスを落とす。
「おやすみ、ヒイロ」
「おやすみ、デュオ」
「愛してるよ。」
いつもなら、そのままゆっくりと眠りに落ちるヒイロがデュオの耳元で小さく呟く。
「俺も愛している。」
間もなく、ヒイロは安らかな寝息をたてはじめた。

が、そんなヒイロに相反してすっかり目が冴えてしまったのは、可愛らしい囁きを聞いてしまったデュオである。
めったに聞けない『アイシテル』なんていう言葉がヒイロの口から聞けた日には、眠気も吹っ飛ぶ!(うちの駄文では何時でも言ってるというツッコミは無しでお願いします/笑)

デュオの脳裏には、ヒイロの声で『愛してる』がエンドレスリピート。

アイシテル。
愛してる。
ア・イ・シ・テ・ル。

愛を囁くヒイロの唇まで想像されてしまって、先程までの眠気は何処へやら。
腕にヒイロを抱いたまま、気が付けば窓の外はうっすら夜が明け始めて来ていた。

「こりゃ、寝れそうにないなぁ。」
すっかり寝るのを諦めたデュオは、ゆっくりと体を離すと未だ気持ち良さそうに眠りの中に居るヒイロを起こさないようにベッドから立ち上がる。

その辺りの服で軽く身支度を整えると、静かに部屋を出る。

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起床時間までまだ幾らかあるデュオは、まだ完全に夜の開けきらない街に気分転換の散歩に繰り出していた。

日常的に車で通る街だが、時間帯も早い上に歩きというスピードからか、まるで違う街に居るかの様に感じてしまう。

デュオはいつもと異なる雰囲気の街を散策するように、咥え煙草でのんびりと足を進めていると、早朝独特の冷たい空気がアドレナリンの出まくっていた脳味噌の中を鎮めてくれる。

…早朝散歩も悪くない。
今度はヒイロを連れ出してみるか…
などと、デュオは考えていた。

静かな早朝の街に、カラカラと音がする。
その方向に目をやると、ふと小さな花屋に目が止まる。
店員らしき人影が、店のシャッターを開け仕入れたばかりだろう花々を運び込んでいる最中らしい。

デュオは何気なく近づくと、緑の葉が丸く茂る小さな鉢植えに目が止まる。
桜の花に似た白い花が1つ2つと咲いている姿が、何故だか自宅で夢の中に居るだろう愛しい人を思い出させる。

じっと花を眺めるデュオに気が付いた店員が花を運ぶ手を止め、声を掛ける。
「何気ない鉢植えだけれど可愛いでしょ?」
「そうですね。」
軽く頭を下げながら、デュオは鉢植えの前に腰を降ろす。
「これはもともと高山植物で、『高山の雲の間にある花』だから雲間草って言うんですよ。」
デュオの目の前にある鉢植えを手に取り、店員が花の名前を教える。

「こういうのを『可憐』っていうんだろうな。」
花屋の定員は、デュオの言葉にくすっと微笑むとデュオに差し出しながら花の特徴を話す。
「株の丈が低いから、精一杯背伸びして咲く花の姿はとても健気でしょ。
この花が誕生花の人は『仕事とかを目一杯こなすような意欲の持ち主』なんて言われるんです。」
「オレ達の本当の誕生日なんて判らないけど、まるでヒイロだな。」
今度はデュオくすっと微笑む。
「開店にはまだ早いだろうけど、この花売ってもらえないかな?」
デュオからの突然なお願いに、店員は快く承諾すると白いリボンを掛けた鉢をデュオに手渡した。

「ありがとう。」
お金を支払い、その場を後にしようとするデュオを店員は慌てて呼び止める。
「そうそう、その雲間草の花言葉は『愛らしい告白』なんですよ。」

店員に向かって軽く会釈すると、デュオは両手の中にすっぽりと納まる小さな鉢植えを大事そうに抱えながらすっかり日の昇った街を、急ぎ駆け出した。

デュオに『愛している』と小さく呟く、愛しい人の眠る二人の部屋へ。

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

■あとがき(別名:言い訳)■
あぁ~、甘いっ!!(笑)
雲間草は2月25日の誕生花です(汗)
『Saxifraga idsuroei』は『雲間草』の事です。