世間では、クリスマス用のイルミネーションが街を飾り、幸せそうな家族やカップル達で街はお祭りムード一杯…
そんなご時世に、オレは世間とは対象的な薄暗い廃虚の中で、上着のポケットからひしゃけた紙箱を取り出すと、曲がり気味の煙草を咥え火を付ける。
世界中が今日という日に浮かれているのは、『クリスマス』というだけではない。
あの戦争が終結し、世界統一国家が誕生した重要な記念日なのだ。
そういう、大切な日に限ってこの平和な世界がお嫌いなテロ組織の皆さんは、オレ達プリベンターに色々と仕事を作ってくれちまう。
たった今も、反乱分子の本部をぶっ潰したばかりだし。
辺鄙な場所にある世間から忘れられたこんな無人コロニーには、クリスマスの『ク』の字もありゃしない。
まぁ、ココもさっきまでは壊滅作戦の火花で、下手なネオンより派手に騒がしかったが、作戦が終了してしまった今となっては、火薬と硝煙の匂いだけが漂う廃墟に成り下がっていた。
ったく、オレだって世間様同様に幸せムードに浸りたいんだっ!
本当なら今日だって、オレの愛しい恋人とラブラブする予定だったんだぞっ~!!
かなり前から、あんな事や、こんな事を沢山計画して準備万端だと思ってたのにっ!

「このバカどものせいでっ!オレの甘い一夜計画は水の泡だぜっ」
足元に転がる、モビルスーツの残骸を蹴り飛ばし悪態を付く。

長くなった灰を下に落としながら時計を覗くと、日付はクリスマスから普通の日に変わっていた。

「まぁ、無事に『任務完了』?」
クリスマスなんてちっとも気にしてないだろうオレの恋人の決まり文句を真似して呟くと、独り寂しく吸っていた煙草の火を踏み消し、現場を後にした。

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こんな世間の恋人同士が愛を語っちゃったりしている日に任務に就いていたのはオレだけじゃなかった。
ヒイロも、例外に漏れず、だ。

初めは、クリスマスという一大イベントをオレが見逃す訳は無く、随分前からヒイロとオレの二人分のクリスマス休暇をシッカリ上司に申請していた…
…にも関わらず仕事する羽目になったのも、任務と名の付く物には至極真面目なヒイロさんのお陰だ。
今回の事件が発覚し任務がオレ達の元に来た時、即拒否しようとしたが、横に居たヒイロは「任務了解」
と、淡々とした声で即答していた。挙句に思いっきり睨まれ、オレの任務着任もあっさり決まった。

ちくしょーと思いつつも、国家転覆の危機をそのまま放置するなんて事はさすがのオレでも出来ない。
全力で任務に当る気持ちにはなるが、性格上やっぱりクリスマスというイベントはそのまま見過ごす事なんてのもやっぱり出来ない。

ラブラブな夜を過ごすのは無理だとしても、とりあえずクリスマスプレゼント位は贈りたいじゃないかっ!

クリスマス当日には、お互い任務の真っ只中だろうから、郵送なんて事は出来ないだろうし、散々渡す方法を考えた結果、ヒイロの荷物に忍ばせる事にした。
只でさえ、ヒイロの手荷物は少なくて小さい。
だから余り大きなプレゼントは忍ばせる事は不可能だし、何より着任先で邪魔になったりしたらヒイロの事だからあっさりと捨て兼ねない…
そんな事をされた時には、とっっっても切ない。
オレは、以前からプレゼントにと狙っていたモノの内、あるモノに決定しを早めに買い、準備しておいた。
そして着任当日の朝、ヒイロの隙を見て、プレゼントをばっちりとヒイロの荷物に忍ばせる事に成功した。
もちろん、『行ってきます』と『任務成功』のキスも忘れなかったけど。

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任務も無事終了した今となっては、こんな場所に用は無い。

「とっとと、地球に戻って、ヒイロとクリスマスのやり直しでもしますか~」
隠しておいた、シャトルに乗り込み、地球に向けて発進させる。

コロニーから離れてしばらくしてしまえば、操縦を自動運転に切り替えられる。
ココのところ徹夜が続いていたから、少し仮眠でも取って置こうかと思いながら、スイッチを押す。

ピコーン

コントロールパネルの警告灯が赤く点滅し、警告音を発生させ、自動操縦に切り替えるのと同時に入れた監視システムが、侵入者の存在を告げる。

「チッ、侵入者?ミスったか?!」

生命反応があるシャトル後部の一室に向け、無重力を利用し体を素早く浮かす。
扉前に来ると、ホルスターから銃を取り出して構え、電子ロックを解除すると同時に、一気に室内へ飛び込むっ!!!

「やぁ、デュオ」
そこには武器格納用ボックスの上に、涼しい顔で足を組んで座るヒイロ。
「注意が足りないぞデュオ。もし、俺が敵だったらどうする?最悪の場合はシャトルごと爆破でもされかねないぞ。」
唖然としたまま動きが固まってしまったオレに対して、ヒイロは淡々と文句を言う。
「っていうか、なんでヒイロさんがここに居るんでしょー…??…」

ヒイロだって任務に就いていたはず。
ココとは随分離れた場所だったはず。

?マークの出まくっているオレの疑問を察したように、ヒイロが一言。
「任務は昨日とっくに終了させた。」

ミッション開始予定時刻は、オレと同じだったはず…
新たに疑問が浮かんだけれど、独断先行はヒイロの専売特許でしたと、深い溜息を付く。
「…で、なんでヒイロがここに居んだよ~」
さっきと同じ質問を投げかけてみる。

ヒイロは目前にすっと腕を出し、袖を捲る。
そこには、オレがクリスマスプレゼントとして、ヒイロの荷物に忍び込ませた、腕時計がはめられていた。

そう、オレがヒイロへの贈り物に選んだのは腕時計だった。

任務時にも便利なように、日付、ストップウォッチ、12時間計、タキメーターの付いたクロノグラフモデルで、もちろん防水もバッチリ。
ヒイロの細い手首には、大きめかとは思ったが見易いようにとメンズサイズを選んだ。
けれど、その時計に決めた最大の理由は、白い文字盤に青い針という珍しいデザインだったからだ。
街の時計屋で見た時、その白に浮き立つ青がヒイロに似合うと一目惚れした。
有名ブランド製で、数の少ないその時計は、時計とは思えないようないい値がしたがそんな事は関係なく、ヒイロの荷物に忍ばせる為に小さいプレゼントと考えた時にはこれしか贈る気にならなかったのだ。

それを、何も言わずにきちんとヒイロが腕にはめてくれている。
余りの嬉しさに、ヒイロの腕を掴むとまじまじと覗き込んだ。

「あれ?」
覗き込んだ先の時計はリューズが引き上げられていて、時刻も合っていないし動いてもいない。
オレが不思議そうに見つめると、ヒイロは何やらごそごそとジャンパーのポケットから小さなリボンの付いた箱を取り出し、オレの目の前に差し出した。
「開けろ。」
つっけんどんに言うヒイロに従い、その箱を開けるとそこには、腕時計が納まっていた。
その腕時計はヒイロにプレゼントした時計と同じメーカーの別シリーズの物だった。
ヒイロのと同じクロノグラフモデルだったが、チタン製のベルトに300m防水で、こっちの方が丈夫そうだった。

「俺からのクリスマスプレゼントだ。」
ヒイロはそう言うと照れたように横を向く。
「お前が俺の荷物に忍ばせたプレゼントを開けた時、びっくりしたぞ。デュオの為に買っておいた物と同じメーカの時計だったんだからな。」
オレは嬉しさの余り、ヒイロを抱きしめると早速プレゼントの時計を腕にはめる。
すると、この時計もリューズが上げられ動きが止まっている。
動かそうと、手を掛けるとヒイロがそれを征する。
「ちょっと待て。」
ヒイロはオレの腕に自分の腕を並べると、二つの時計を1秒単位までしっかり同じに合わせ、同時にリューズを押す。
パチッというリューズのはまる音と同時に二つの時計は同じ時刻を刻み始める。

チッチッチッチッ
耳を澄ませないと聞こえない、小さな音…
別々の腕にはめられていても、同じ時を刻むその二つの時計。

「ヒイロ…」
「二人のプレゼントが互いに時計だと判った時に、こうしようと決めていた。」
小さな声で、しかししっかりとした声でいうヒイロの台詞に不甲斐なくも涙が出そうになった。

ヒイロはどんな気持ちで、オレが忍ばせたプレゼントを見てくれたのだろうか…
オレにプレゼントを少しでも早く届ける為に、猛烈な勢いで任務をやっつけただろうヒイロの姿を想像すると、余りの愛おしさに自然と笑みがこぼれてしまう。

「クリスマスは数時間前に終わってしまったけど、オレの所には最高のサンタが最高のプレゼントを持って来てくれた。」
にんまりとした顔のまま、ヒイロを抱き寄せ、照れて赤いままの頬にキスをする。
そのまま、唇をゆっくりと滑らせ、今度はヒイロの唇にキスを落とす。
久しぶりのキスは、初めは軽いものからだんだんと深いものに変わっていく。
それと同時にオレの背中に廻したヒイロの手が服を強く掴む。

・・・このままじゃ、理性の抑えが効かなくなりそうだなと思い、ゆっくりと自分の唇を離すと、ヒイロがオレの後ろに廻した腕にある時計を見ると小さく呟く。

「この時計の青い針を覗く度に、お前の瞳を思い出すだろうな。」

「ヒイロ…そんな事言われると止まんないんですけど…」
困ったように見つめると、ヒイロは優しく微笑んだ。

オレは、ヒイロからの時計に目をやる。
「後、数時間は自動操縦で大丈夫だな」
そう言うと、再びヒイロに口付け、ゆっくりとその場にヒイロを横たえた。

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

クリスマス駄文~
久しぶりの駄文です~
ヒイロさん!別人!甘い!
毎度ながら、言い訳はございませんっ(≧Д≦)
ちなみに、デュオがヒイロにプレゼントした時計は『オメガ スピードマスター ブロードアロー SS』、ヒイロがデュオにプレゼントした時計は『オメガ シーマスター300M チタン クロノ メンズ オートマ チック』をモデルにしております(汗)
どっちも私が欲しい時計だっ!どっちも40万位する、えっらく高い時計様でございます。
だれか、私にプレゼントしてくれ~ぃ(笑)