デュオとヒイロの自宅には物が多い。
正しく言うならば、デュオの持ち物がとてつもなく多いのである。
ヒイロは、物に執着を持たない為、驚く程持ち物が少ない。
戦中の訓練から、必要最低限の物以外は所持しないという癖が身に着いているからだ。
しかし、今のヒイロの仕事部屋には、普通の部屋並の調度品が揃っている。
窓には、春の新緑を思わせる様な、若草色のカーテン。
大きめの観葉植物。
壁には、澄んだ青空の写真が入ったパネル。
長時間座っても疲れないという、宣伝文句の仕事用椅子。
その殆どは、デュオがヒイロの為に購入したり、プレゼントした物。
唯一ヒイロが自主的に購入したのは、仕事机の上に乗っている、最新モデルの高機能なパソコンだけだ。

それに対してデュオは、貧乏性なのか物を捨てず、挙句に直ぐ衝動買いをする。
その為に、デュオの仕事部屋は足の踏み場も無い位、ガラクタだの、車や銃の部品だの、資料だのが散乱している。
仕事部屋というより、倉庫である。
普段は、なかなかセンスの良い物を買ってくる割に、この状態はなんなのだと愚痴を零したくなる位ひどい状態になっている部屋を見る度に、ヒイロは
「衝動買いをやめろ」
と、しつこく言っていた。

二人で居る時はデュオの衝動買いは抑えられるものの、ヒイロが任務で数日でも家を空けると、必ず何かが増えていく。
毎度の事になっているので、いつもはお小言程度で済むのだが、今回はそうはいかない。

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ヒイロが任務を終え、1週間ぶりに帰宅し、自宅の駐車場に車を止めようと車を寄せると、
既に帰宅しているデュオのクルマの横に見慣れない小さな赤い車が止まっている。

デュオの愛車はブライトラリーレッドのアメ車。
不経済で不便だというヒイロの反対を、アノ手コノ手で言い包めて購入した、かなりお高いクルマだ。
5000ccを超える排気量と、馬鹿デカい車体。

そんな車の横に止まっているので、尚更小さく見えるその車を見た瞬間、ヒイロは直感した。

「…アイツ、また衝動買いしたなっ…」

自分の車を1発で車庫に駐車スペースに入れると、部屋に上がる。
玄関のドアを開けると、いつもはすっ飛んでくるデュオが来ないと言う事は、なんらかのヤマしい事がある証拠だ。

「…デュオ…」
リビングのドアが開いた瞬間に、ドスの効いた声で自分の名前を呼ばれたデュオは、
ヒイロが何に怒っているのか思い当たる節がある為に、恐る恐る読みかけの雑誌から顔を上げる。

「…お帰り…ヒイロ♪」
エヘヘと引き攣った笑顔を覗かせるが、ヒイロの眉間に寄った皺の多さから、デュオはそのまま硬直する。

「…お前、また衝動買いしたな…」
デュオは、ご立腹なヒイロのあまりの迫力に、手に持っていた雑誌を落としソファに小さくなる。
「何で、お前は俺が居ない隙に無駄な買い物ばかりするんだ!!!!!」
「だって…」
「なにか言い訳でもあるのか?」
冷たい視線でデュオを見ると、でかい図体を小さくしながら上目使いでヒイロを見上げている。
余りにその情けなさ具合に、呆れつつもデュオの横に腰掛ける。
「理由を聞こうか?」
デュオはうんうんと、大きく首を縦に振る。
「車重は軽いし、速いし、ステアリングの反応はクイックで運動性能抜群だし、ボディはルビー・レッドだし・・・」
「で?」
「一目見た瞬間、どうしても欲しくなっちゃてさ~。ヒイロみたいだなぁ~と思って。」
そこまで一気に喋ったデュオが横に座るヒイロの顔を見ると、耳まで真っ赤になり、ぷぃっと顔を反らせる。
「お前は、そんな理由で衝動買いするのか?」
「うん♪」
デュオの言葉により一層、赤くなるヒイロを抱き寄せると、デュオは満面の笑みを浮かべる。
「オレの衝動買いの理由の殆どそうだよ。
 『ヒイロにあげたいな』
 とか、
 『ヒイロに似合うな』
 とか、
 『ヒイロみたいだな』
 とか。オレの全ての基準はヒイロなの♪」

「で、幾らしたんだ。」
照れを隠すヒイロが、突き放したように言う。
「500万ちょっと。高嶺の花な所が、またヒイロっぽ…」

げいんっ!!!!!!!!!!!!

ヒイロさんの全力ゲンコツがデュオの頭に飛んだ。

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数日後…

ヒイロに殴られた跡のタンコブが引かないデュオが、新たな小さい愛車で帰宅すると、
車庫にはヒイロの車は無く、黒い車の前にヒイロが立っていた。
「ヒイロ?お前の車は?」
「処分した。」
「お前のアシがなくなっちゃうじゃん。」
「今度からは、これに乗る」
そういうと、ヒイロは黒い車体を指差す。
「これって、オレの前の車と同じ車種じゃない?」
前のアメ車も、あんなに文句いってたのにと、デュオは首を傾げる。
「同じ車種ではない。同じ車だ。塗り替えて貰った。」
「えっ?!」
「これには俺が乗る。デカくて、黒くて、燃費悪くて、まるでお前みたいだろう。」
唖然と立ち尽くすデュオを残し、デュオの元愛車に乗り込み、キーを回しエンジンを掛ける。
少しアクセルを吹かすと、大きめの排気音がする。

「煩いところも、デュオみたいだな。」
ヒイロは細く微笑み、ゆっくりと車をスタートさせた。

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

・・・何も言い訳がございません(汗) アホの極みな駄文…
スイマセン、スイマセン、スイマセン、スイマセン…
車好きにしか判らないネタなので、ずっと公開するべきか迷った駄文でしたが、思い切ってUPしてみましたf(^^;)
参考までに・・・
本文中に出てくる、アメ車は『GM シボレー・カマロ 35周年記念限定車、Z28 35thアニバーサリー』、小さな車は『ロータス エリーゼ 』というヤツが元ネタになっております。 で、どちらも私自身が一度は所有してみたいと、夢見る高嶺の花でございます~