デュオが最近、女にモテているという噂を聞いた。
この前、奴がこなした任務が発端らしい。
デュオは女性から見ると、カッコイイのだそうだ。
以前にカトルが
『デュオだって、世間一般の基準から言うと、カッコイイと言われるんですよ。』
などと、教えてくれた。
デュオはいわゆる、『イイ男』と言われる外見をしているらしい。
綺麗な蒼い瞳。
俺よりもずっと高い身長・長い手足。
俺には真似できない人懐っこい笑顔・巧い会話。
人目を引く、長い三つ編。
俺には無い物ばかりだ。

『イイ男』の定義という物は俺にはよく判らないが、
そういう基準を満たしているのであれば、最近の状態は起こるべきして起こった事なのだ。

いや、元々モテるはずだったのならば、それが表面化したと言う感じか?

当のデュオは周りが騒がしく成り始めた当初から、
「あの女達の事なんて、何とも思っちゃいない。」
と、しつこい位に繰り返して俺に言う。
そんな言葉に対して、
「俺には関係ない」
とか
「お前の好きにすればいい」
という返事であしらっている。
デュオが何故そんな言葉を繰り返して言うのか、俺には理解できないからだ。

それでも、
『デュオが、ヒイロの任務終了を待ちながら、オープンテラスの喫茶店で
コーヒーと煙草を堪能していると、見知らぬ女性が急に同席してくる。』
とか、
『デュオが、ヒイロへのお土産を物色していると、女性店員が必要以上にあれこれを詮索してくる。』
等と言う噂を小耳に挟むだけで実際に見た訳でもないのに、胸の奥には何とも言えない苦しさが生まれる。

『デュオの好きにすれば良い』という考えとは逆に、苦しい胸中…
頭と心の対処方法が見つからず、俺は2人の自宅でもプリベンター本部でもデュオを避けている。
仕事上、必要最低限に取り交わさなくてはいけない場合以外は口を利かない。
話さなくてはいけない時には、顔を見ないように会話をする。
家では、任務中以上に話していないと思う。

今朝も別々に出勤した。

任務に向うデュオに、必要情報の入ったディスクを渡す時も無言で差し出しただけだった。
「ヒイロ~♪さんきゅ~♪」
奴はいつも以上に明るい声で俺に擦り寄って来たが、無視してとっとと自分の席に着き端末のキーボードを叩き始めた。

デュオは、じっとこちらの様子を見ていたがしばらくして、任務に向う為に事務所を出て行く。
キーを叩く手を止め、今度は俺が歩いて行くデュオの背をじっと見送る。

また、任務先で女子を助けるのだろうか…
それとも、外に出て又騒がれるのか…
沢山の無粋な予測が頭を回る。

なぁ、デュオ。
俺は本当に、どうしたら良いのか判らないんだ…
お前は、この俺の態度をどう思っているのだろうか?

「ヒイロ、今のままでいいのか?」
俺の後ろを通りすがりざまに、トロワが声を掛けて来る。
コンピューターのキーを叩く手も止めず、
「あぁ。」
と、だけ簡単に答えを返した。

*********************

数日後…

今日、俺には任務が在った。
公休日で、家に残るデュオには何も声を掛けずに出勤した。
ココの所はいつもそうだ。

任務も簡単に終了し本部に戻ると、急いで報告書作成に取り掛かる。

デュオは、自分だけが休みの日には決まって俺を迎えに来ていた。
何回止めても必ず迎えに来るので、今では習慣になってしまった。

…さすがに、今日は来ないだろう…
少し、寂しい気がする…

そう思い、忙しく動かしていた手を休める。
「習慣とは恐ろしいな…」
俺は小さな溜息を付いた。

「ヒイロは居るか?」
突然、事務所に現れた五飛が俺を探し、声を掛ける。
「何か用か?」
抑揚の無い返答に、五飛は眉をしかめるが。
「貴様に用がある。黙って着いて来い」
と一喝された。
強制的な一言に、今度は俺が眉をしかめるが、五飛の言葉に何らかの意図がある事を察し、
端末の電源を落とし、五飛に黙って付いて行く事にした。

俺が五飛に連れてこられたのは、街の大通りが見える裏に入った小さな路地だった。
そこには既に、トロワが待っていた。
「時間通りだな。五飛。」
「当然だ。言われたように、ヒイロを連れてきた。」
俺を此処に連れてきたのは、五飛の意思だけではないようだ。

「何故、俺をここに呼んだ?」
俺を呼んだ理由を一番理解していそうなトロワに質問を投げかける。
しかし、トロワは逆に俺に以前と同じ質問をしてくる。
「ヒイロ、今のままでいいのか?」
「俺を此処に連れてきた理由を言え」

「お前とデュオをこのままにして置く訳にはいかない」
トロワと俺の会話に五飛が口を挟む。
「しかし、今回はデュオ自身の問題だ。」
「何っ!」
「落ち着け五飛。」
俺の発言に怒りの表情を露わにした五飛を、トロワが静止する。

すぐ目前の道に高級車が到着し、プラチナゴールドの髪が車から降りているのが見える。
カトルだ。

カトルは周りを見回し、こちらに五飛とトロワそして俺が居るのを見つけたようだが、
別段こちらに声を掛けたりする様子はなく、何か別の物を探しているように見える。

まもなくすると、人ごみを軽やかに避けカトルまで小走りに走り寄る人影がある。
いつもの三つ編を解き、1つに結わいた髪をなびかせ、長めのコートと濃い目のサングラス。
俺には、それがデュオだと直判る。

2人はその場で何かを話しているようだが、口さえ見えれば読唇術で二人の会話が判るのに、少し奥まったこの路地からでは2人の口元の動きを見る事が出来ない。
しかし、デュオは何か落ち着かない様子で、この場所からの急いで立ち去りたいのだと判る。
しばらくすると、デュオは体を反転させ、数歩先に歩き出す。
長い髪が揺れる。

久しぶりにデュオの姿をゆっくり見た気がする…

歩き出したデュオをカトルが呼び止めているようだった。
その後、すぐさまカトルが、俺達の居る路地に走り込んで来た。
取り残されたデュオは困惑の表情のままその場で、カトルを待っているようだった。

そのうちに、小声が聞こえはじめる。
「あっ、あの人…」
デュオに周りの女性達が気付き始めた。
その囁きが大きくなる。

「デュオ!」
俺は咄嗟に路地から出て、名前を呼んでしまった。
自分の名前を呼ばれたデュオが、慌ててこちらを振り向く。
ココ数日、まともな会話をしていなかったし、今朝も何も言わず任務に出掛けたから、デュオの名前をしっかりと呼ぶのも久しぶりだった。

「ヒ、ヒ…」
デュオが俺の名前を呼ぼうとした矢先、
デュオに気が付いていた女性達のうちの数人がデュオに声を掛けて来た。

「えっと…その…」
戸惑っているようなデュオは、あっさり女性達に囲まれてしまった。
話し掛けてきた女性達はそんなデュオの様子に構わず、話を続けようとする。

やはり、デュオが自分以外の誰かと居る姿を見るのは嫌だ!!

「デュオ!」
再度、名前を呼ぶ。
デュオは困惑した表情のまま、自分の名前を何度も呼ぶ俺の方を向く。
名前は呼べても、相変わらずその場に立ったまま動く事ができない。

「ねぇ、ヒイロ。このままにしておく訳にはいかないでしょう。」
路地の裏側から、カトルが俺に話し掛ける。
「デュオの気持ちも十分理解しているのだろう?」
トロワも、カトルの言葉に付け足すように声を掛ける。
「俺が、何の為にお前をココまで連れてきたと思っている?」
五龍も続ける。
「さあ、ヒイロ!」
痺れを切らしたように、カトルが俺の背中を押し出した。

「デュオ!」
デュオの名前を三度呼ぶ。
相変わらず、女性陣に囲まれたままだったが、デュオは周りには目もくれず、
ずっと動かない俺を見つめたままだった。

俺は意を決して、デュオに向って走り出す。
そのまま駆け寄り、抱きつくようにデュオの胸に飛び込んだ。
デュオは、相変わらず困惑した表情のままだったが、飛びつく俺をを落とさないように
しっかりと抱きしめた。
久しぶりに感じるデュオの腕の中、デュオの香り・・・
何とも言えず、胸が一杯になる。

咄嗟の俺の行動に、デュオの周りを取り囲んでいた女性達は、声に成らない、驚きの声を上げる。
取り巻きの一人が、デュオに問い掛ける。
「…この人…誰?」

にすっかり顔を満面の笑顔に変えていたデュオが、より一層の笑顔で答える。
「あ~、前にも言ったでしょ。オレの婚約者♪美人でしょ?」

俺を自慢気に抱きしめているデュオの言葉に、恥ずかしくなる。
それでもデュオの言葉に答える様に、しっかりとデュオの胸に顔を寄せ、周りを見ると
取り巻き全員は閉口してしまっていた。

俺は顔を挙げ、周りの取り巻き達を強い視線で見る。

『こいつは俺のなんだから』

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

以前(て、いうかかなり前)に書いた駄文『Jealous H』のヒイロ側のお話です。
書く書くと言いながら、なかなかUP出来なくて、今日やっとこ更新(汗)
なんだかんだ言いながらも、実はヤキモチ焼きなヒイロさんでした。