麗らかな日差しの日。
爽やかな薫風と、緑林の香りなんかが漂ってしまいそうな春の一日。
それなのにオレ様は、日の当たらない自宅の仕事部屋に缶詰状態だ。
不健康極まりない。
それにしたって・・・
オレは、溜まりに溜まったデスクワークを一気に遣っ付けてる真っ最中なのだ。
プリベンターとして任務を完了すると、必ず『報告書』というのを提出しなくてはいけない。
それをずーっと貯め続けた結果が今の『オレ』。
任務は完璧にこなすさっ!でも、その後のデスクワークが駄目。
駄目っていうか嫌。
じっとしながらの作業なんて、無理無理。

ヒイロやトロワはかなりしっかりした報告書を提出しているらしい。
以前、ヒイロに『オレのも書いて~』と頼んだら、
「駄目だ」と一蹴された。
でも、2人一緒の任務の時は、有無を言わさずヒイロが報告書を作成してくれているから、
その分の作成はしなくても大丈夫。
だから、実際にこなした任務の数より作成する分は減っているはず。
愛かな?愛だな(笑)

まぁ、貯め過ぎた結果、遂にレディ・アンが切れた!
今週中に溜まった分を提出しないと、只でさえ少ないヒイロと一緒の公休日を全部無くすと脅された。
愛するヒイロとの時間がこれ以上減るのは我慢できないから、泣く泣く頑張ってる訳。
トホホ・・・
それにしても、やっぱりオレって現場向き、と再認識する。

で、その愛するヒイロは今日は公休日。
さっきから、リビングで掃除機の音がしている。
きっと、オレが散らかしまくった雑誌やら、飲みかけのまま放置した酒やら、改造しかけのジャンク品を眉間に皺を寄せながら
片付けているに違いない。
あぁ~、後でまた起こられるな、オレ。

しばらく鳴っていた、掃除機の音が止んだ。

オレが煮詰まっている仕事部屋のドアが開いた。
「デュオ」
ヒイロが、中を覗き込んで来た。
室内に充満した煙草の煙に、眉間に寄っていた皺を深くし、溜息も深く付きながら部屋に入って来ると、有無を言わさず換気用の小さな窓を開ける。

「煙草、吸いすぎだ。」
顔の前の空気を手でパタパタと仰ぎながら、ヒイロが文句を言う。
「煙草でも吸わなきゃ、じっと座ってなんか居られないでしょー」
自分のいつもよりも過剰な煙草消費量を正当化しようと、大量のデータが表示されているパソコンを指差す。
「体に悪い」
ヒイロが呆れ顔で言い返す。
もしかして、オレの体を心配して文句言ってくれた?
あぁ~、もう愛しいなぁ~♪

ヒイロの細腰に腕を伸ばし、引き寄せる。
素直に引き寄せられるヒイロを見て、
『昔はこんな事でも照れて嫌がってたな~』
とか思い出しながら、唇を寄せると、
「煙草臭い!」
って怒って、唇を逸らされた。
「とっとと報告書を完成させて、せめていつも位の喫煙量にしてくれ。」
ヒイロさん・・・それはないでしょ。
オレは、ちぇっと舌打ちついでに頬にキスを落とす。

即座にヒイロが片手に持っていた上着で叩かれたっ!
上着の存在に気付く。
「あれ?どっか出掛けるの?」
「あぁ、夕飯の買い物に出掛けて来る。」
「おぉう!じゃあオレも一緒に行く~」
外の空気吸いてぇ~!

「お前は、大人しく仕事していろ」
ヒイロは立ち上がりかけたオレを、椅子に押し返す。
「えぇ~、仕事は帰って来てから・・・」
オレの仕事逃避発言は全てを言い終わるより前に、ヒイロの強い台詞に遮られる。
「任務はきちんと真っ当しろ!只でさえ、出勤日なのに本部へ行っていないのだからな。」
エエ、ソノトオリデス。

「自宅で任務を行うというのを理由に行かないのなら、キチンと作業を完成させろ!」
タダシイゴイケンデス。
でもねぇ。
「ヒイロを一人で街中なんかにだしたら危ないって!」
こんな美人を一人で街に出すなんて危険だって!

しつこく、食い下がるオレに、決定的なヒイロの一言。
「あまり、ごたごた言っていると、夕飯作らないぞ。」
オレは直にパソコンに向き直り、作業を再開する。
ヒイロがご飯作ってくれるなら、我慢して仕事しますって気になるよな。
当のヒイロは、仕事を再開したオレを見て、満足気な表情で部屋を出て行こうとする。
さて、本気で報告書やっつけちゃいますか!
箱に手を伸ばし、指先で煙草を取り出そうとすると、もう幾らも残ってない。

「あっ!ヒイロ、ついでに煙草1カートン、よろしくっ!」
キーボードに手を乗せたまま、ヒイロに煙草の追加を頼む。
「あぁ、了解した。」

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そういえば・・・
以前のヒイロは、オレが煙草を吸うのを嫌がっていたなぁ。
オレが煙草に火を付けるとロコツに、眉間に皺を寄せた気難しい顔を向けて来てたし。
吸った後は、当分キスしてくれなかった時期もあったな。
今は、1本吸った位なら、普通にしてくれるけど。

今でも『体に悪い』とか色々言うんだったら、口淋しくないようにキスを一杯させてくれたら本数が減るのに。

それに、オレの吸っている煙草の銘柄も覚えた。
赤と白のパッケージのBOX。
『煙草』っていうだけで、オレのお気に入りのヤツをきちんと買って来てくれる。
買い置きが少なくなったら、足しといてくれたりもする。
出来た奥様だよな~とか、つくずく思ってしまう。

さっきだって、オレの体を心配してくれてたし。
この面倒臭い仕事を終わらしたら、少し減煙でもしますかね?
決して禁煙ではないけど(笑)

あー、完全に吸いきっちまった。
無くなった煙草の代わりに、コーヒーで口を誤魔化す事にしますか。

頭の片隅で、そんな事を止め処なく考えながら、手はキーボードを叩く音を止めない。

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しばらく作業に集中してたらしく一気に作業が進み、一息付き、終わった作業を再確認していると、
オレの中のニコチンは完全に切れた。

ちょうどいいタイミングで、ヒイロが帰宅したらしい。
仕事部屋の扉から手だけを覗かせ、買い物袋から取り出した煙草をカートンごと投げてよこす。
「ほら、頼まれていたやつだ。」

「あれ?」
いつもの煙草じゃない。
オレの好きな銘柄覚えてくれてたんじゃなかったっけ?

いかにも女の吸いそうな、軽いメンソールの煙草。
こんな軽いのじゃ、満足出来ないぜ。

「そんだけ本数を吸うのなら体に悪いから、軽いヤツにした。」
ヒイロはぶっきらぼうに言う。
はいはい、やっぱり心配してくれてるのね。

よっこいしょと、椅子から立ち上がり、ヒイロの向ったリビングへ足を向ける。

でもねー
「メンソールなんて吸ってたら、勃たなくなっちゃうぜ~」
「お前にはちょうど良いんじゃないのか?」
おいおい、それはないでしょう(涙)

「ヒイロだって、困るんじゃない?」
「別に困らない。」
あら、ヒイロ、そんな事言いながら顔赤くしてるし。

「そ、そんなに困るなら、本数を減らせ。」
まだちょっと動揺してるよ、ヒイロ♪
これ以上困らせたら、怒られそうだから辞めとくけどね。

「判った、判りました。じゃあ口寂しく無いように・・・」
夕飯の支度を始めようとするヒイロを後ろから抱きしめ、さっきしそこなった口へのキスをする。

ヒイロがまた眉間に皺を寄せ、
「コーヒー臭い」
と文句を言う。
あれから、しこたまコーヒー飲んでたからな。
「煙草味とコーヒー味どっちが良い?」
「どちらも程々にしろ。」
「へいへい。じゃぁ、どちらも欲しくならないようにっと。」

オレは、ヒイロを抱き上げ、そのまま隣の部屋の扉を蹴り開けた。
仕事部屋ではなく、2人の寝室の扉を。

・・・まぁ、
コトが済んだら満足感で、また煙草吸いたく成るんだろうけどさ。

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

だから何?っていう突っ込みは入れないで~~(≧_≦)
『煙草を吸うデュオな話』を書きたかったんだけど、予想通り玉砕! 読み直してみると、すっげー不健康な話(笑)
天気が良い日に、部屋に缶詰で、煙草&コーヒー飲みまくりで、挙句にHへ持ち込むかっ、デュオ!って感じですね(汗)