【2】

「しまったなぁ…」
カトルに指定された待ち合わせ場所に戸惑っている。
デュオは、カトルとの待ち合わせ場所へ向う途中為、運転する車中で困惑の表情を隠し切れないでいるのだ。
先程の電話で、カトルから指定された待ち合わせ場所が、例の事件の起こった現場のすぐ近くだったからだ。
まさに、あの事件の現場ーーー
デュオの顔が一番知れていて、取り巻きの女性達が多く出没する場所だったのだ。
「このまま、ばっくれちまおうかな~、…なんて訳にもいかねぇな。」
デュオは、待ち合わせ場所から少し離れた道で、車を止めた。
カトルと待ち合わせ場所を決めた時、何で気が付かなかったんだろう…

「ヒイロが良く言う様に、オレって、本当に馬鹿かも…」
ハンドルにおでこを付け、愛車から降りるのも、躊躇してしまう。

オレは、逃げたり隠れたりするのは、得意だ。
いつも通りにしていれば、ほとぼりが冷めるまで適当に誤魔化したりして、
今回も上手くやり過ごせたと思う。
しかし、そんな事を続ける気が起きない。
ヒイロが自分の恋人である事を隠したりするのがどうしても嫌だった。
自分の為だけじゃない、ヒイロの為にもだ。
かといって、ヒイロを彼女達の前に出して、晒し者みたいなマネをさせるのも憚れる。

「あんな美人なヒイロをそうそう、人様に見せるかっつ~の。」

「…オレの考え、矛盾してるよな…」
デュオは、独り言を続ける。

ヒイロとは堂々と付き合いたい。
でも、女にも男にもヒイロを簡単に見せたくない。
自慢と独占ーーー
それが、自分の行動をが矛盾させている。
そのせいで、ヒイロにも嫌な思いをさせているのは間違いない…

あの事件以来、ヒイロのクールさに輪が掛かっているのは明らかだし、
家でも本部でもまともに口も聞いてくれていない。
今日だって、出掛ける際に声も掛けてくれなかった…
「トホホ…ブルーな気分に磨きが掛かってきた…」

デュオが、落ち込みを増していると、指定されていた待ち合わせ場所に高級車が到着し、プラチナゴールドの髪が車から降りているのが見える。

カトルが、着いたようだ。

「さてと。カトルも着いた事だし、とっとと合流してこの場から逃げるとするか。」

少しでも、面倒臭い事態を減らす為に、デュオは、いつもの三つ編を解き、一つに結わき直す。
助手席に投げてあった長めのコートを羽織り、濃い目のサングラスを掛ける。
車内のルームミラーで容姿を確認し、覚悟を決めて車から降りる。
人ごみを軽やかに避け、カトルまで小走りに走り寄る。

「よぉっ、カトル。」
少しサングラスをずらし、蒼い目を覗かせ、カトルに軽い挨拶をする。
「デュオ。お呼び立てしてすいません。今日は、お会いできて嬉しいですよ。僕も…」
「挨拶はそれ位で良いからさ、取りあえず、場所変えねぇ?ココはちょっとさ。」
カトルの挨拶を途中で遮り、デュオはこの場所からの急いで立ち去りたい様子を匂わす。
「そうですか?じゃあ、さっそくお店に移動しましょうか?」
にこやかな笑顔で、カトルが素直にデュオの言い出しに同意する。

ほっとした様子で、デュオは自分の車にカトルを案内しようと、体を反転させ
数歩、歩き出した所でカトルに呼び止められる。

「あっ!デュオ、僕一つ大切なモノを忘れてしまいました、チョット待ってて貰えますか?すぐ戻ります。」
「えっ?!ちょっと、カ、カトル~」
デュオが呼び止めるより早く、路地に走り込んで行ってしまった。
「カトル~、マジかよ~。早くこの場から移動したいのにな~」
困惑の表情で、デュオはその場でカトルを待つしかなかった。

すぐと言った割に、カトルが戻って来ない。

そのうちに、小声が聞こえはじめる。
「あっ、あの人…」
デュオに周りの女性達が気付き始めた。
その囁きが大きくなる。

「デュオ!」
カトルが走りこんだ路地がら、デュオを呼ぶ声が聞こえる。
聞き間違える事の無いその声がした方を向く。
今朝、何も言わず出かけていったヒイロが、そこに居た。
「ヒ、ヒ…」
ヒイロの名前を呼ぼうとした矢先、
デュオに気が付いていた女性達のうちの数人がデュオに声を掛ける。

デュオは、突然現れたヒイロに困惑していた。
話し掛けてきた女性達はそんなデュオの様子に構わず、話を続けようとする。
「えっと…その…」
戸惑うデュオは、あっさり女性達に囲まれてしまった。

「デュオ!」
再度、ヒイロに名前を呼ばれる。
デュオは、困惑した表情のまま、自分の名前を又呼ぶヒイロの方を向く。
ヒイロは、相変わらずその場に立ったままだった。

「……」
ヒイロはデュオの名前を呼んだまま、躊躇している。
「ねぇ、ヒイロ。このままにしておく訳にはいかないでしょう。」
路地の裏側から、カトルがヒイロに話し掛ける。
「デュオの気持ちも十分理解しているのだろう?」
トロワも、カトルの言葉に付け足すように声を掛ける。
「俺が、何の為にお前をココまで連れてきたと思っている?」
五龍も続ける。
「さあ、ヒイロ!デュオを取られたくないんでしょう♪」
痺れを切らしたように、カトルがヒイロの背中を押す。

「デュオ!」
ヒイロがデュオの名前を三度呼ぶ。
相変わらず、女性陣に囲まれたままだったが、デュオは周りは見ず、ずっとヒイロを見つめたままだった。

ヒイロが、デュオに向って走り出す。
そのまま駆け寄り、飛びつくようにデュオの胸に飛び込んだ。
デュオは、相変わらず困惑した表情のままだったが、飛びつくヒイロを落とさないようにしっかりと抱きしめた。

咄嗟の出来事に、デュオの周りを取り囲んでいた女性達は、声に成らない、驚きの声を上げる。
取り巻きの一人が、デュオに問い掛ける。
「…この人…誰?」

『ヒイロが公共の面前で自分の胸に飛び込んで来る』という行動にすっかり顔を満面の笑顔に変えていたデュオが、より一層の笑顔で答える。
「あ~、前にも言ったでしょ。オレの婚約者♪美人でしょ?」

自慢気に抱きしめているデュオの腕の中で、恥ずかしそうに、それでもしっかりとデュオの胸に顔を寄せるヒイロの美人ップリに、取り巻き全員は閉口してしまっていた。

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「まぁ、これで、煩く言い寄ってくる女性も減りますね。」
カトルが、2人の様子を見ながら、満足そうに言う。
「やはり、俺達はこういう役か。」
「これで、また元通りだな。」
五龍とトロワが呆れながらも、一安心したように言う。

「ふふふふっ。只では済ませませんよ。トロワ、五龍、コレな~んだ。」
「カメラか?」
五龍は、細く微笑むカトルの手元を覗き込む。

「ええ。シャッターチャンスは逃さず、バッチリですよ。さて、現像しましょう。」
可愛らしいウィンクをする、カトルに、トロワと五龍は感心するしかなかった(笑)

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

やっと、完結~!
うぅ~、上手く表現できなかったよー(T_T)
やきもちを焼くヒイロが珍しく突発的に行動を起こす様子を書きたかったのに…
自分の表現力の無さが、寂しい限りです(笑)
でもどう見ても、カトルさまが自分の楽しみの為に、ヒイロを焚き付けたようです(笑)