ここ数日、俺達はすれ違いの生活だった。
俺は、長期任務が重なり、ほとんど自宅には帰れない日々が続いていた。
俺は昨夜、やっと任務から開放され、久しぶりにココに帰って来た。
大抵の場合付いている電気は、消えたままだった。
デュオは昨日から任務先に缶詰になっているという連絡を受けていたから、誰も居ないのは十分承知だった。
上着の内ポケットから、カードキーを出し、部屋に入る。
廊下を通りリビングを覗くと、暗い中でも中の様子が判る。
…汚い…
デュオでは片付けてなど居ないだろうと想像はしていたが、やはり凄まじい事になっている。
不本意ながらこの燦々たる部屋の様子に目を瞑り、疲れた体を独りでは広い位のベットに滑り込ませ、久々の安眠を貪った。
いつもよりも遥かに遅い時間に起床すると、降り続いた雨も上がり、夏らしい日差しがカーテンの間から差し込む。

今日は、デュオも帰って来る。
その前に、この人間の住んでいるとは思えないような部屋をどうにかしたい。

思いっきり、カーテンを開け、リビング日差しを部屋に入れる。
明るくなれった部屋の余りの汚さに、深い溜息を付く。

飲みかけのコーヒカップ。
山盛りの灰皿。
握りつぶされた煙草の空箱。
脱いだままの服。
読みかけの資料の山。

俺が居ない間の、アイツの生活が手にとるように判る。

「アイツは、片付けるという事を知らないのか」
沸々と湧き上がる怒りに一瞬、手を付けるのを止めようかとも思うが、しかし今日は徹底的に掃除すると決めたのだ。
それに、こんな部屋ではゆっくり休む事など出来ない。
意を決して、作業に取り掛かる。

散らばる服を拾い集め、洗濯機にぶち込む。
ゴミを棄て、洗物を済ます。
机の上に広げられた書類をまとめる。
その間には、1枚の写真が丁寧にしまわれた、フォトスタンドが立てかけられていた。

16歳のデュオと俺が写った写真…
「まだこんな写真を持ってたのか。」

俺は思い出となる写真など撮った事は無かったから、俺の最も古い写真だった。
L4コロニーのカトルの所へ行った時に撮られた物だった。

散々抵抗する俺を無理矢理引きずり込み、撮られた写真…
不機嫌そうな俺の隣で、満面の笑みで写るデュオ。

…あの時、デュオはしつこく俺に『笑え』と言っていた。
結局、そのまま撮ったのだったな…

懐かしい思いで、写真を手にとったまま、片付けたばかりのソファーに腰を下ろす。

この写真を撮った頃。
デュオは何かある度に、俺に『笑え』と言っていた。
「ヒイロは笑った方が美人だ」
とか、
「お前の笑顔が好きだ」
とか、しつこい位だった。
ふと、俺が小さく笑うと、デュオは大喜びで最高の笑顔を返してくれていた。

そんなデュオの大げさな位の喜び様を思い出し、俺は自然と笑顔になる。

昔の俺は笑った事が無いわけではなかったが、任務成功時か、自傷の笑みだった。
そんな自分がこんな風に、幸せに笑える日が来るとは思ってもいなかった。

これも、全てデュオとの時間がもたらした物だ。

日が落ちかけた窓の外から、デュオの車の音が聞こえる。
俺が帰ってきているのはメールで連絡しておいたから、大急ぎで帰って来たに違いない。
この部屋にだって、超特急で上がって来るだろう。

本当は、顔を見たら即座に、部屋の汚さを怒ってやろうとも思ったが、こんな写真を大切にしていてくれるデュオの為にも、たまには玄関まで迎えに出てやるか。
そして、「お帰り」を言ってやろう。

あいつが好きだと言う俺の笑顔で…

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

久しぶりの駄文。 色々忙しくて、放置プレイ状態だったサイト生活(笑)への復活駄文です。
ヒイロさんが、デュオの帰りを待つって感じですか?(笑) それにしても短いっ!