久々にやってしまった…
何年かぶりに風邪を拗らせてしまったのだ。
普通の風邪なら、栄養の有る物食べて寝酒かっくらって寝てりゃ治るのに、今回のはかなり重症な気配だ。
いつもはフィアンセが風邪を引いて、それを付きっきりで看病してても移らないオレなのに。
最近は無理してからナァ~
たまの休みには、婚約したフィアンセとの新居探し&新居の家具探し&引越の荷物作りやら大量に発生する結婚の準備に費やしてたし、昨日は地球の極寒地での任務ときた。
その任務も、早くフィアンセの元に帰って来たくて強行軍の日帰りしちまったし…
で、駄目押しに任務から帰って来たその足でフィアンセ宅に直行して甘~い夜を過ごし、疲れてたオレは裸のまま、暑がりな部屋主の部屋で爆睡。
朝起きて、風邪気味な自分に気付き、大切な人に移しちゃマズいから
『用があるから帰る』
ってメモだけ残し、まだ寒い明け方に超特急で自分のマンションに帰宅。
久しぶりに風邪薬でも飲むか~と、思ったら既に引越しの準備をして梱包ダンボールの中だって事を思い出して諦めた。
そりゃ~、風邪も悪化するわな…なんて後悔先に立たず。
さっき、オレの『地球からの日帰り』という我侭に付き合わせてしまった、今回は珍しく任務相棒だったカトルに電話したら、やっぱり風邪引いたらしい。
相手の顔が見れる電話の向こうで、カトルの恋人トロワが、いつもは無表情のヤツにしては珍しく怒った顔で、
「カトルは今、熱出して寝ている。お前の気持ちも判らないではない。が、寒い土地に慣れていない砂漠の王子様をお前に付き合わせて日帰りさせる事は無いだろう。カトルだって、普段は自分の仕事とプリベンターの任務と多忙なんだ。それに…」
と、長々とお説教をくれた。
オレは心底謝って、電話を切った。

「今日は休みで良かったぜ…」
力なく独り言を言って、ベットに倒れ込んだ。

うぅ~ん、どれ位寝ていただろう。
さっきまで寒かった部屋が暖かくなってる気がする。
加湿器が有るらしく、乾いた喉に湿気が気持ち良い。
熱のあるオレの熱いおでこにも、なんか冷たいものが乗っている。
それになんだか人の気配が…

ダルい体を起こし、よろよろとリビングの様子を見に行く。

「ヒイロっ!」
そこには、今朝まで一緒にいたフィアンセが台所に立っていた。

「ヒイロ、来てたのかぁー」
嬉しくて顔は笑顔なんだけど、熱のせいで力のない声を掛ける。
その声に気が付いて、ヒイロが慌ててキッチンからこっちに来る。
「何で起きて来るんだ。いいから寝ていろ。」
怒った口調でベットルームに押し戻されそうになる。

ふと、リビングのソファに目をやるとそこには五飛が何気ない顔でコーヒーを飲んでいた。
「五飛っ??なんでお前まで来てるんだよぉ~。もしかして、ずっとヒイロと2人っきり??」
五飛はちらっとこちらを見ながら、眉間に皺を寄せた。
「失礼な奴だ。ヒイロに頼まれてこの寒い中届け物をしてやったのだ。ヒイロもさっきまで馬鹿者の事を怒っていたぞ。」
「なぁにぃ~」
五飛の台詞に反論しようとするオレを、体は小さいくせに力強いヒイロが強制的にベットへ連行された。

「デュオ!せっかく来てくれた五飛に何言ってるんだ。」
「ヒイロ、怒ってる?五飛も言ってた。」
ベットに寝ながら、聞く。
「…ああ。」
「なんで?」
「…」
ヒイロは無言のまま布団を掛ける。
「言ってくれないと気になるじゃないか。教えてくれないと寝れない!」
子供みたいなダダをこねてみる。
しぶしぶ、ヒイロが答える。
「届け物をしてくれた五飛に失礼だ。」
「届け物?」
「サリィの所へ行って薬を取って来て貰った。お前の部屋がめちゃくちゃで、薬が発見出来なかったからだ。」
「そっかー。後で五飛に謝まっといて。」
「早く元気になって、自分で言え。」
「へいへい。」
理由を聞いたけど、ヒイロ、まだ怒ってるっぽい??
「怒ってる理由それだけ?」
「…ああ。」
どうも腑に落ちない。
「本当に?」
ヒイロの眼を真っ直ぐに覗き込んで見る。
なんだかやっぱりまだ怒る理由がありそうな気配がする。
オレのずっと見つめる視線にヒイロが耐え切れなくなったのか、溜息をついてもう一つの理由をポツリポツリと話し出す。
「今朝、お前は俺の家に残したメモに嘘を書いただろう?」
「んん?嘘?…『用があるから帰る』の事?」
「そうだ。具合が悪いなら直ぐに言え。トロワからお前が具合悪そうだとプリベンター事務所に連絡が入った。何故、俺には何も言ってくれない?」
もしかして、ヒイロはすっごい心配してくれたって事なのかぁ。
「悪かったよ。別に嘘じゃなかったんだけど。心配かけちゃ悪いかな、と。」
「お前はバカだ。」
ヒイロ…何もそんなに、はっきり言わなくても…
ちょっと反省しながら、大人しく横になる。
「ごめんな、ヒイロ。」
ヒイロは返事しないで、オレの額に冷たいタオルを乗せる。
そっか~、そんなに心配してたのか…悪い事したな。
「ごめんな、ヒイロ。」
もう一度謝ってみる。
声は出さなかったが、コクンと頷く。
よかった、許してくれたのかな?

「今おかゆを作っているから後で持ってくる。」
ヒイロの手料理!思わず、顔が緩む。
「それまで大人しく寝ていろ。」
すたすたと部屋を出て行こうとするヒイロに声を掛ける。
「判った、大人しく寝てる。その代わり、キスして」
許してもらった事に調子付いて、いつものヒイロなら有無を言わさず殴るような事を言ってみる。
それなのにっ!
熱で火照るオレの頬に、すっごい優しいキスをしてくれたっ!
「約束、守れよ。」
キスした後にそう言うと、ヒイロは慌ててドアを閉め、部屋から出て行った。

『ヒイロ!可愛いぞ!風邪って良いかも!
結婚すれば、あんなに可愛いヒイロがオレの面倒みてくれるんだ~♪
幸せだな~♪
五飛にも、元気になったらきちんとお礼言わねーとな。
カトルとトロワにも謝らないといけないし。』
そんな事考えながらウトウトしていると、食事を持ってヒイロがベットルームに入って来た。

「食事だ。空腹のままでの薬は体に悪いから食べろ。」
ヒイロは持って来たトレーをベット横のサイドボードに置くと、オレをゆっくり起こす。
「口を開けろ。」
「へっ??」
突然に言われて、俺はびっくりしてしまった。
「お前が俺が具合悪くなるといつもするだろう。」
テレながらヒイロがおかゆを掬ったスプーンをつっけんどんに、オレの口の前に差し出す。
『やっぱり、風邪最高!!』
ヒイロにおかゆを食べさせて貰いながらオレは心の中でニヤけっぱなしだった。

一通りヒイロの作ってくれたおかゆを食べ終えると、五飛が持って来てくれた薬を飲めと、袋を渡された。
袋をひっくり返すと、中からごっそりと薬が出てくる。
なんだか、見た事の無い新しい薬まである。
サリィの奴、自分が開発した新薬の実験台にしようとしてないか?
…不安が脳裏をよぎる。
大量の薬の中に、使用方法のメモ意外にもう一つメモを見付け、読んでみる。

『デュオへ
 ヒイロが、とってもすっごく心配してるから、薬はきちんと全部のんでね(はあと)
 サリィ』

文末のハートマークが凶悪だ。
やっぱり、実験台かよオレ。
挙句に、薬を全部飲ます為にヒイロをネタにしやがって!
こんなの危なくて飲めるかっ!

「デュオ、早く飲め。」
ヒイロの視線が痛い。

しょうがない、ヒイロにこれ以上心配掛けたくないし、腹を括るぜ。
でもな~~
…ちょっと、我侭言ってみるか?
「なぁヒイロ。薬が大量で飲むのが大変なんだよなぁ~。だからさ、口移しでくれない?」
さっきも、殴られるような事言っても平気だったし、淡い期待半分殴られる覚悟半分で言ってみる。

一瞬ヒイロは怒った顔をした。
『うわ、やっぱり殴られるか~』
そう、覚悟したのにっ!
ヒイロは薬とオレの食事中から飲みかけだったボトルの水を口に含み、オレに唇を寄せて来る。

こくん。

ヒイロの口から、水と一緒に薬が押し込まれ、オレの喉を通っていく。

『うひゃ~。やっぱり風邪最高!風邪の神様有難う!』

何度か、ヒイロからオレに口移しで薬が飲まされる。
最後の薬を押し込む用に、オレの口の中にそっと差し出された舌を自分の舌で絡め取る。

「…っんっ」
ヒイロが少し反応する。
その反応に気を良くして、舌を絡ませたまま抱き寄せ、自分が居るベットに引き倒す。
ヒイロの細腰を撫でる。

ごちんっ!

遂に、ヒイロに殴られた。
「いいかげんにしろ!お前は病人だろう!」
ごちんっ!
おまけにもう一つ殴られ、ヒイロの体を手放す。

「大人しく寝ていろっ!」
怒りながら、食事のトレーを持って部屋から出て行くヒイロが、呟いた。

「元気になったら、ゆっくり相手してやる。」

うわ~!
やっぱり、風邪っていいっ!!

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

周りに風邪が流行ってるので書いてみました。
こんな風に、介抱してくれたらすぐ治りそう(笑)
それにしても、タイトルどうにかならないのか?自分! どなたか、良さそうなタイトル付けてくれないかしら…