居酒屋風レストランの個室。
数十人規模の人々が、ワイワイと楽しそうな声を上げている。
年の瀬も押し迫った12月になると、通常の会社でよく行われる行事…
『忘年会』。
酒の力も助長してか、妙にテンションの高い団体の中に、スーツ姿のデュオとヒイロは、今そんな場所に居た。

忘年会とはいうが、二人が普段所属しているプリベンターの行事ではなかった。

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数ヶ月前、戦闘用モビルスーツのOS開発が行われているという情報をプリベンターがつかんだ。
疑惑のあるその企業の表向きは、あくまで市販のコンピューター用システムの開発を主だった業務としている、どこにでもありがちなシステム会社だったが、上層部の一部が裏で怪しい行動をとっているらしかった。

そこで、コンピュータに強いデュオとヒイロがシステム会社への潜入捜査の任務を受けた。

既に、潜入を始めて数週間になり、物騒な計画の首謀者も絞れ、殆どの調査も終わりを迎えようとしていた時、世間では忘年会シーズンに突入していた。
いくら怪しいシステムを裏で作っていたとしても、表向きはただのシステム会社なので、何も知らない一般社員達の間では、忘年会が企画・実施されていた。

例外に漏れず、デュオとヒイロにも参加のお誘いが掛かっていた。

当初、二人は潜入調査もほぼ終わりを迎え、殆どの必要な情報は掴んでいたので、『転職して間もないので仕事が終わらない』等と理由を着けて、参加を辞退していたのだが周りからの誘いは執拗だった。

余りなお誘い攻撃に、最初に参加する事になったのは、『付き合い酒も任務の内』と豪語するデュオで、『着任中は任務に差し支えるような事はしない』という完璧主義のヒイロを
「ホラ、意外な情報が手に入るかもよ。」
と、言葉巧みに言い包め、最終的には半ば強制的にヒイロも参加する事になってしまっていた。

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二人を執拗に誘った社員たちは、単に忘年会に二人を呼びたかった訳ではなかった。

この会社にデュオとヒイロが転職(という潜入捜査の建前)してきた時、二人が配属された部署以外の社員の間でまで、ちょっとした騒ぎになった。
『頭脳明晰・有名大学を優秀な成績で卒業(もちろん、これも潜入捜査用のニセ経歴)・寡黙だが、女社員もビックリな位美人』なヒイロと、『ウィットに飛んだ会話・人なつっこい笑顔・スラっと高い身長に一目を引く長い髪・という女性受け抜群』なデュオという、美味しい人材が二人もやって来たのだ。

女子社員(デュオ狙い)だけでなく、男子社員(こっちはヒイロ狙い)まで二人を狙わない訳が無い。
二人に近づく口実が欲しい面々は、新人歓迎会を企画したが、二人に上手くかわされていたので、今回の忘年会は躍起になって誘いまくったのだった。

そんな忘年会の裏事情を知らず、二人は他の社員達に囲まれた現状に至る。

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忘年会開始からすでに2時間が経っていた…

「これは、当り年のワインなんですよぉー」
「30年物のブランデー飲みませんー?」
「あっ!グラスが空ですよぉ。注ぎますね♪」
部屋の入り口に程近いテーブルでは、デュオが女子社員に囲まれ、次から次へと酒を勧められていた。
「そんなに飲ませたら、帰れなくなっちまうよ♪」
軽口を叩きつつも、あっさりとグラスを開け、自分に酒を勧めている女子社員達に、
「オレも、飲んだから次は君ね~」
等と言いながら、相手から酒瓶を受け取り注ぎ返す。
そんな事を既に数時間行っているデュオの足元には、何本もの空ビンが転がっていた。

「酔っ払っちゃった~」
と笑うデュオに、取り巻く女子社員達の心中では細く微笑んでいるのは必至。

その頃、テープル1つ挟んだ先に座るヒイロは、男性社員に囲まれていた。
「今度のプロジェクトのシステム仕様はどう思います?」
「いや~、ヒイロ君の仕事の速さには脱帽だよ~」
仕事の会話に託けてはヒイロに話掛け、近くに擦り寄って来ては、
「あれ?お酒進んでないね。」
などと、こちらでもアルコールの力を目一杯借りようと、酒を次々に勧める。

元々、余り社交的ではないヒイロは勧められる酒を上手く交わす手段を知る訳もなく、それほど酒には強くないにも関わらず、ヒイロは途切れる事なく注がれる酒にデュオ程のスピードではないものの、グラスを空ける羽目になっていた。

「どうですか?これ美味しいでしょう♪」
「んー…そうだな…」
いつもの厳しい口調からは想像できないような、甘い声。
挙句に普段はシッカリと結わかれているネクタイを緩め、体は脱力気味で頬も桜色に色付き、目まで潤んできている。
只でさえ、色気虫なヒイロのそんな素敵な姿を見せられた男性社員という狼の群れの心中はデュオを取り囲む女子社員同様、細く微笑んでいるのは手に取るように判る。

…尋常ならないヒイロに大注目しているのは男性社員だけではなかった。
デュオは、テープル1つ挟んだ先に座るヒイロが心配で仕方がなく、今日は全く酔いが回らない。

これ以上、他の奴らの傍にヒイロを置いておくのは危険だと判断したデュオは、自分を取り囲んでいた女性陣を掻き分け、ヒイロの周りの男共を完全に無視し駆け寄ると、ヒイロに腕を伸ばす。。
「ヒイロ、こっち来い!」
「あー、デュオ~♪」
ヒイロは、ゴキゲンそうに伸ばされた長い腕に素直に抱き寄せられる。
「っつたく、今日のお前は飲み過ぎですっ。」
お前が任務中に酒に酔うなんてホントありえないと、驚き半分でヒイロを椅子から持ち上げようとすると、ヒイロはさっきとはうってかわって反抗的にデュオの腕を押し返す。
「デュオはぁ、女と仲良くしている方が楽しいだろぉー」
むぅ~と、頬を膨らませて抵抗するヒイロが、むやみやたらに可愛い。

デュオは、ヒイロが珍しく飲みまくってほろ酔い状態になっている理由に深く溜息を付く。

要するに…
ヒイロさんの可愛いヤキモチ。

ここの所の二人は表向きの会社員としての業務と裏の任務で殆ど不眠不休状態。そんな状態で大量に飲酒すれば、さすがに無敵エージェントのヒイロだって酒に酔います。
挙句に、デュオが女に囲まれ、チヤホヤされながら酒を飲んでいるのが気に食わなかったのだ。

「あ~、もう可愛いなぁ。」
デュオは呆れ気味にヒイロを椅子から持ち上げると自分の横にすとんと降ろすと未だ膨れっ面のヒイロの唇に小さくキスをする。

「ゴメン、ヒイロ。早く家に帰ろう。オレが甘いホットチョコレート入れてやるからな。」
「んっ~、帰る~」
甘い声で擦り寄る様子に、デュオはご満悦の微笑みのままヒイロを抱きかかえる。
「ぢゃ、皆さんお先に~。お疲れ様~☆」

二人のやり取りの一部始終を見せ付けられた、社員は呆然と二人を見送ってしまっていた。

後日、二人の様子に打ちのめされただけでなく、追い討ちを掛ける様に上層部の陰謀が暴露された社員達の心中は計り知れない…
ご愁傷様…

…だれも、二人の仲は引き裂けないという事で(笑)

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

あ~、もう何も言い訳しません!!!(汗)
ヘンテコリンな駄文を生産していまった~(≧Д≦)
突発的に甘々なヒイロさんか書きたくなってしまった暴挙です。