13日23時52分
ピーピーピー
眠りが深くなりかけたデュオを、電話の電子呼び出し音が叩き起こす。
こんな時間に鳴る電話は、ろくな用件では無い。
「…ふぁい、デュオ・マックスウェルです」
いかにも寝起きの声で電話を取ると、受話器の向こうから緊急任務を伝える声が聞こえる。
…やっぱりな…
「了解。30分で本部へ着く。」
勢い良くベットから出る。

デュオが眠りに付いた時と変わらず、ベットの半分は綺麗なままで、居るべき人物の気配は相変わらずココには無い。
「ヒイロの任務終了予定が近かったのになぁ~。これじゃぁ、オレと入れ違いだな。」
ヒイロの枕をポンポンと軽く叩くと、クローゼットから取り出したシャツに手を通す。

懐と腰のホルダーに銃を隠すと、玄関へ急ぐ。
ブーツを履こうとした所で、大事な忘れ物を思い出し、慌ててキッチンへ踵を返す。

冷蔵庫のドアを開け箱の所在を確認する。
「今日のうちに買っといて良かったな。」
デュオは、なんだか嫌な予感はしていたんだよと、1つ溜息を付く。

テーブル上のメモ用紙に走り書きの伝言を残すと、再び急いで玄関を飛び出した。
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14日18時17分

ヒイロは部屋に入り電気を点けるが、やはり人の気配は無い。
任務終了の連絡を入れた時に、デュオが緊急任務で借り出された事は聞いていたので、そのまま手に持っていた小さな袋をテーブルに置く。

そのテーブル上には、デュオの飲みかけのコーヒーカップがそのままに置かれている。
「飲んだら片付けろといつも言っているのに。」
デュオは何度言っても学習しないと、溜息を付く。

と、カップの横にはデュオが書いた汚い字の走り書きメモが一枚置かれている。

「なにが『ちょっと出掛けて来る』なんだ?任務だろう。」
などと、指摘したい気持ちを抑えつつ、メモに書かれている通りに冷蔵庫を開ける。
正面の棚に、ケーキの箱が1つ置かれている。
ヒイロお気に入りのケーキ屋の包み…

「ただ、これを置きに来ただけだったんだが。」
先刻テーブルに置いた袋をコツンと叩く。

「本部に戻るのは少し遅くなるか。」
ヒイロは1人呟くと、冷蔵庫からケーキの箱を取り出し、蓋を開ける。
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15日02時35分

「ただいま~」
疲労した体を引きずるようにデュオが帰宅すると、家を出た時同様にヒイロが帰宅している様子はない。
真面目なヒイロの事だから、先日完了した任務の報告書作成か何かで本部詰になっているだろうと大体の予想はつく。

「まぁ、報告書なんてオレは書かないけどな~」
職務怠慢を宣言するような独り言を呟きながら、部屋に上がる。

キッチンを覗くと、テーブル上には出しなに書いたメモは無く、その代わりに味気の無い紙袋と、これもまた味気の無いカードが1つづつ。


デュオが置いた訳ではないのだから、ヒイロが一旦帰宅していた事は一目瞭然。
無機質なカードには『Valentine』の一言だけが印刷されている。

冷蔵庫を開けると、そこに置いていったケーキが無い。

「ヒ~イ~ロ~♪可愛いなぁ~」
自分の居ない時にも関わらず、ヒイロが自分の為にこの紙袋とカードを置いて行ってくれた事、そして1人大人しくケーキを食べただろうヒイロを想像し、思わず顔が綻ぶ。

「じゃあ、オレも早速。」
ヒイロからの袋を開けると、中には1本のチョコレートリキュール。
酒好きデュオは、早速栓を開け戸棚から取り出したグラスに中身を注ぐと、甘いチョコレートの香りが部屋全体に広がる。
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同日22時10分

ヒイロは玄関のドアを開ける。
昨日、帰宅した時とは異なり、電気が点き、温められた部屋。

そして…
「お帰り~」
明るいデュオの出迎えの声。
居ると煩いのに、居ないと寂しく感じるデュオの存在がこの部屋に在る事に、ヒイロ小さく微笑むと室内に足を踏み入れる。

飲みかけのリキュールボトルとグラスがテーブル上に置かれている。
「プレゼントありがとな、ヒイロ。」
「あぁ。お前からのケーキは美味かった。」
「ヒイロの好きそうなケーキだっただろ?」
デュオが自慢気に言う。
「そうだな。」
ヒイロがコクリと頷くと、デュオの笑顔がより一層嬉しそうに笑う。

「でな、お前のくれたリキュールも超美味いんだよ。一緒に飲まない?」
「アルコールはいい。」
「大丈夫。これはアルコール分控えめだから。」
断ったヒイロの前に、デュオはテーブル上のボトルを取り上げて勧める。
栓の開いたボトルからは、チョコレートやバニラの甘い香りが鼻をくすぐる。

甘い香りにヒイロの気持ちが動く。
「1口なら。」
デュオは、グラスを受け取ろうと伸ばしたヒイロの手を制すると、ボトルに口を着ける。中身を呷ると、そのまま口付け流し込む。
ヒイロの口内に、リキュールとデュオの舌が入り込む。

こくん。
ヒイロの喉が動き酒を飲み込むが、侵入したデュオの舌はそのまま口内を味わうように深くヒイロの舌を絡め取る。

「…っん…ふっ…」
甘い声と共に、飲みきれなかったリキュールがヒイロの口角から流れ落ちる。

デュオはゆっくりと唇を離す。
「1口だけ?」
潤んだヒイロの瞳を覗き込む。

「…もっと…」

ヒイロはデュオの首に腕を廻した。

[ END ]

■あとがき(別名:言い訳)■

甘い!甘すぎるっ!
ウチの駄文が甘いのは、毎度の事なんですがね…