<ATTENTION!>
 一応、以前作成した駄文『亡くした誓』の後のお話となっています。
 読まなくても、問題なく書いたつもりですが、1度ご覧いただけると嬉しいです。
 デュオ&ヒイロ共に、「別人かっ??!!」状態です(笑)
 では、どうぞ~↓

 

「これから緊急会合に出てきますから、」
「そうか」
「すいません、ヒイロ。僕が無理やり連れて来たというのに。」
「構わない。お前が行かなくては会合の意味が無いだろう?」
とてもすまなそうな顔で謝るカトルに、小さく微笑み返事を返す。

「だったらヒイロ、散歩でもなさったらいかがですか?海沿いの公園はとても眺めが良いそうですよ」
「そうだな…」
申し訳なさそうなカトルのせっかくの提案を拒否する理由も大して思い当らなかったので、大人しく従う事にした。
少しホッとした様子のカトルからの車で公園まで送るという申し出は、少し歩きたい気分だと理由を付け断ると、俺はそのままゆっくりと公園に向かって歩き出した。

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なるべく人ゴミの少ない道を選び、ゆっくりと海沿いの公園に向かって歩く。
人工ではない、不規則な自然の風が髪を揺らす度にココが地球であることを実感させる。

「地球に下りるのは、何年ぶりだっただろうか…」
と、考える俺の目の前をブラウンの長い三つ編みが横切る。
「デュオっ!!!!」
慌てて追いかけ、横顔を確認すると、デュオとは全く似ても似つかない男性で、伸ばしかけた手を引っ込める。

「あいつ以外にも長髪を三つ編みにする奇特なやつは居るんだな。」
一人呟くと、三つ編みを揺らしながら笑うデュオの顔がふと脳裏に浮かぶ。
今はもう、俺の傍にない幸せな笑顔…

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デュオを最後に見たのは、3年程前。

デュオと二人で就いた任務中、俺は爆発に巻き込まれた。
爆破予定のMS秘密製造工場内に残ったまま自分自身で爆破スイッチを押したのだ。
ほんの少しの脱出時間のズレは、二人の生存可能性を限りなく低くした。
その時、俺は任務が確実に成功し、デュオが助かる方法を選んだ。

多くの足音と銃声が俺に向かって来るのを確認し、肩が外れて感覚も遠く、腕も上がらなくなっていた手に握っていたスイッチを無理やり壁に叩き付け押した―――

…その次の記憶は、無機質な白い天井と、自分に繋がれていた医療機器の機会音だった。

後になって聞いた話だと、瓦礫の中からデュオによって助けられた俺は、1年以上もの間、意識が戻らない状態にあったのだと言う。

無事に意識が戻った後、すぐに任務に復帰する事は不可能だった。
長期間、寝たきりの状態だった俺の体からは筋肉というものは殆ど無くなっていたし、関節も上手く動かず、日常生活を開始するまでにもかなりの時間が掛かったが、医者が驚く程の速さで任務復帰可能な位まで完全に回復し、現在に至る。

長いリハビリ期間にも、好きだった蒼い瞳の微笑みは俺の傍には無かった。

デュオが姿を消した事は意識が回復してすぐ直感した。
俺の怪我を自分のせいにして、デュオはその責任を一人で背負いここから去ったに違いない事を…

「ヒイロはデュオと付き合っていたんですよね?」
カトルも、過去形の質問を確認するように聞いただけで、それ以上は何も聞いてこなかった。

しばらくして俺が退院するのを見計らって、強引にウィナー家へ連れて来られてしまった。
カトルの強引なくらいの申し出にはさすがに閉口したが、俺たちの事に深い追求が無かったのは有難かったのを覚えている。

『デュオは相変わらず馬鹿な奴だな。
爆発に巻き込まれたのは俺自身の意思だったのに…』
それをデュオに伝えたいと何度も考えていたが、それでも俺は事故後に1度もデュオを探しだす事はしなかった。

デュオはあいつの意思で俺の元から去ったのだから、と自分に言い聞かせて…

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公園に着き、しばらく歩くと、潮の香りが鼻をくすぐり、目の前に海が広がる。
夕日が海面に反射した光が、キラキラと眩しい。

コロニーではありえない蒼い海をゆっくり見渡すと、視界の端にまた長い三つ編みをみかける。
ブラウンの腰まで伸びた長い三つ編み。

「!!!」
本能が、あの三つ編みは本物だと告げる。
もし、俺の存在を感じたら逃げそうな気がしたから、デュオの後方から気配を消し、揺れる三つ編みにそっと近づく。

逃げられないように、強く腕を掴む。
「デュオ!」

デュオの体が硬直するのが、掴んだ腕から判る。
異常なくらい驚いたような困惑したような、なんとも言えない顔でこちらを振り向くが、すぐにゆったりとした微笑みを浮かべる。

…そこには、面痩せしてはいたが、以前と変わらない俺の好きだった蒼い瞳のデュオが居た。

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「よかった、ヒイロ。元気になったんだな。」
「あぁ。こうしてここにいるのだから当たり前だろう。」
「そうだな。」
デュオは再び笑顔を零す。
「ヒイロ、背伸びたなぁ。」
『久しぶり』でも『元気だったか?』でもない、当り障りのない言葉に胸の奥が小さく痛む。
昔も感じた事があるような、忘れていた痛みを振り払うように言葉を口にする。

「お前の方がもっと伸びた。見上げていると首が疲れる、座れ。」
俺はそう言って、近くのベンチを指差す。

「へいへい。」
デュオは一瞬固まった様に見えたが、逃げられないと判断したのか、そのまま大人しく指示に従う。
三つ編みを揺らしながら、ゆっくりと腰を掛ける。
その横へ人が一人座れる程度の感覚を空けて、俺はデュオの左に座る。

「お前、今、どうしてるんだ?」
「カトルの所で世話になってる。退院後、強引に引きずり込まれた。」
「あはは~、あいつらしいなぁ。」
「お前の方はどうしてるんだ?」
「ん~、まぁ色々とね。」
「…そうか…」
俺から離てからのデュオの生活が気になりはしたが、聞いても無駄だろうと諦めた。

「もう、体には何の問題も無いから、もうすぐカトルの所からは離れるつもりだ。」
「お前は、一人になると食事取らないからなぁ。栄養バランスとか考えてきちんと飯くらい食えよ。甘い物は好きだったけど。」
「そうだったか?」
「はぁ。自覚無かったのか~?オレが入れたココアを…」
そこまで言うとデュオは慌てて言葉を止め、口を閉ざす。

デュオが入れてくれていたココアはいつも俺好みな甘さで…
読みかけの本が一区切りついて顔を上げると、ちょうど良く湯気のたったカップとデュオの笑顔があったりするのは、日常の事で…

「……」
「……」

俺達の間にしばらくの間沈黙が重く圧し掛かる。

…ザザザ…
ザザ…ザザザ…
波の音だけが妙に耳につく。

重い空気をどうにかしたくて、早く何か話さなくてはと思っていたが、何を話して良いか思い浮かばない。
先に口を開いたのはデュオだった。

「なぁ、ヒイロ。」
「なんだ?」
「…お前、今幸せか?」

それはまるで、
『自分が俺の元から去ったのは正解だったんだよな?』
そう、念を押すかのような問いだった。

「カトルはとても良くしてくれているし、トロワともカトルの所へ頻繁に来る度に顔を合わせている。この前は五飛も来たぞ。」

仲間が、俺を気遣ってくれているのはとても有難いと感じているのは事実だ。
しかし今の自分が、本当に幸せなのかは判らなくなっている。
数年前、自分を包む腕がある事をとても幸せだと思っていた時以上の幸せは無いのかもしれない。
だから、どうしても『幸せ』だと断言する事が出来なかった。

「そっか。みんなは元気そうなんだな。」
「…あぁ…」
俺は、小さく頷く。

「良かった。それ聞いて安心した♪」
そういって嬉しそうに笑うと横から立ち上がり、俺を見下ろす。
今にも沈みそうな太陽が、デュオの背中から照らし表情を影で隠す。

俺には、デュオの顔が逆行で影になる一瞬、笑っているはずの顔が泣きそうに見えた。

「じゃあな。」
それだけ言うとデュオは踵を返し、歩き出す。
「デュオ!」
あいつの名前を呼ぶと、歩みを止めようとはせず後ろ向きのまま手だけを挙げる。
デュオは此処から立ち去る為に、歩みを進める。

俺を入院先の病院に残して姿を消した時、デュオは2度と会うつもりは無いと決心したに違いない。

あいつは俺の行方を探る事を意図的にしなかったはずだ。
そして、それは俺も同じ事だった。デュオは俺を捨てたのだから。

それでも、偶然に再会してしまった。
もう会わないつもりだった俺との再会は、デュオにとってはなによりも衝撃だったに違いない。

…なのに、まるでただの旧友と会ったかのような会話を、『笑顔』をいうとっておきのポーカーフェイスでやってのけたデュオ…

満面の『笑顔』の中で、唯一笑いの無い強い視線で、
『オレ達は、終わるべきだったんだ』
と、俺に強くプレッシャーを掛けながら。

デュオは、このまま『この場所』から立ち去ろうとしているのでは無い。
俺の元から立ち去ろうとしているのだ。
3年前と同様に俺を捨てるのだ。

「お前はまた俺を捨てるのだな。それとも逃げるのか?」
「違っ…」
言いかけた言葉を途中で止め、自笑気味に別の言葉を口にする。
「…そうだよ。オレはお前を捨てて逃げたんだ。」

「お前は、さっき『幸せか?』と聞いた。」
「……」
黙って立ち尽くしたままのデュオを無視して、話を続ける。

「今の俺は本当の『幸せ』ではないと思う。
お前が傍から居なくなってしまったあの時から、幸せを見つけられなくなってしまったんだから。それでも、お前と偶然にも再会して時間だけあの頃に後戻りしたかのように幸せだと感じたんだ。
あの事故はお前のせいじゃない。俺が進んで行ったんだ。お前を守りたくてっ…」

「判ってるっ!!!」
強い口調で、デュオが俺の言葉を遮る。
「それでも、もしオレが爆破を戸惑ったりしなければヒイロを巻き込んだりしなくて済んだんだっ。」
吐き捨てるように否定する。

俺は、深く深呼吸をする。
「俺は生きている。生きて此処に居る。」
強く言い切ると、未だに背中を向けたままで、決して振り向こうとしないデュオの前に回る。

「確かめてみるか?」
そう言うと、広がってしまった身長差を縮めるように背伸びをし、強く噛み締められているデュオの口唇にキスをする。
1度離すと、今度はデュオの首に手を廻し長くキスをする。
ただ唇を合わせるだけのキスだけれど、俺の体温を感じて貰う為に長く長くキスを続ける。

「…ヒイロ…」

合わさった唇の間から、震える声で苦しそうに俺の名前を呼ぶ。
それでもキスは止めなかった。

躊躇し、空を彷徨っていたデュオの腕が俺の背中に廻され、徐々に力が込められる。

ポタリ。
頬に涙が落ちるのを感じ、ゆっくりとデュオから離れると、今度は胸に顔を埋める。

「デュオ、お前は此処に居ろ。俺の幸せはお前とともに在るのだから。」

俺の頭上でデュオが力強く頷くのを確かめると、懐かしい腕の中に体を預けた。

[ END ]

 

■あとがき(別名:言い訳)■

突然にネタを思いついてから一気に書いてしまいました。
私にしては珍しく長めですね。
BGMに松〇聖子の『Sw〇et M〇mories』が合うんじゃないかと思って書いた駄文です(笑)